シュートの種類と、おもなシュート方法は?

いかに素晴しい動きとパスワークがあったとしても、最終的に勝敗を決定づけるのは強烈なシュートか、高度なテクニックを持ったシュートでない限り得点には結びつかず、せっかくのコンビネーションや、フォーメイションも水泡と帰します。そのため、初心者の練習は、シュート中心になるのが普通ですが、その多種類ある中でどのシュートから入って行けばよいかは、それぞれ指導者によっても違いますし、練習する側の興味の問題とも関係してきます。どのシュートでなければならないということはありません。小学生の頃、野球やソフトボール、ドッチボールなどで習得した投球動作をそのまま使うことも導入としてはよいと思います。 

ハンドボールのパスの基本の殆んどが、ステップで行われていることを考え合わせてもステップシュートからジャンプシュートへと段階的に進めると興味を失わずに無理なく身に付けられます。 

また、シュートの種類には次のようなものがあります。 

(1)ステップシュート

①ホップステップシュート

これは誰れにでも簡単に打てるシュートであり、野球の内野手がゴロをさばき、一塁投球するフォームやドッチボールのシュートと同様で、練習をしなくとも小学生の頃から身に付いている基礎技術の一つで、最も遠くへ投げられ、またスピードも出る投法です。

②クロステップシュート

これはセットオフェンスの流れるようなパスワークの中でパスと見せ掛けて、そのままディフェンスの意表をついてわずかなすき間を狙ったり、単発で狙うロングシュートなどでかなり効果的なシュートになります。

③ランニングステップシュート

ランニングステップシュートは、そのまま走るフォームを崩さずに、特に肘と手首を使い、シャープにスナップを利かせて打つ方法で、キーパーとしては、どこで打つのかタイミングがつかめず取りにくいシュートとなります。投げ方はスリークォーターが普通ですが、キーパーのつめ方やバックスの守備によってはサイドスローすればより効果があがります。同様な体勢からチェストシュートも打つと、場面によっては功を奏します。このシュートは速攻やポストなどで使われますが、殆んどの場合立ったまま打つのではスピードがないため、速攻の際キーパーの早い詰めに合った時、あるいは自ら十分接近してプッシュし、キーパーの脇の下や股下を狙うとき効果的です。この方法はランニング姿勢そのままで、肩の振りを使わず、最後までキーパーを見ていてスナップで打つことのできる利点があります。肘を横に張らないで脇につけるようにして、スナップと指先を巧みに使って打つと、コントロールのあるシャープな シュートになります。

ジャンプシュートは最初に空間姿勢を創ることを考え、右投げは左足でジャンプし、左腰、左肩が完全に投げる目標に向くと同時に右腕を引き、振り上げます。ちょうど野球の投手が投球するフォームに上半身は似ています。このような空間のフォームをワンステッナジャンプで繰り返し創って下さい。

ハンドボールのシュートというと、頭に浮かぶのは三歩シュートであり、三歩ステップしてから打つことにつきるようです。この三歩のタン(キャッチして初めての足)、タン(一歩)、タ(二歩)、タアーン(三歩目ジャンプ)というリズムは初心者には難かし過ぎるので、逆に一歩ジャンプからもどると簡単なようです。スタンディングの姿勢から最後の右、左と踏んで、タ、タアーンと一歩、二歩目にジャンプ、そしてシュートというリズムを自分なりにつかむことです。このようにまず最初のジャンプの姿勢をつかめれば、後はランニングとの組み合わせだけなので何とか自分なりの感じができると思います。 最初に一、二、三、と数えながら行うと投球フォームのリズム感が会得できにくくなります。しだいに上達して三歩でも、二歩でも、一歩でも打てるようになったならば、0歩で打つタイミングも習得して下さい。一般的な変化のないジャンプシュートでは経験のあるキーパーには簡単に取られてしまいます。打ちますよ、打ちますよ、というようなテレホンシュートでは名キーパーを突破することができません。そこで早いか、遅いかでタイミングをずらす必要が生じます。キーパーの構えが十分でない時には早く、構えている場合にはすぐには打たず、十分待たせるなど、その場面、場面に応じた使い分けが必要です。  

(2)クイックシュート

キャッチしてすぐ打つ方法ですから0歩か一歩で打つ技術を習得することが先決です。連日の訓練の中でシュートの際、必ずやらなければならないシュートです。速攻でも使いますが、特にセットオフェンスで一瞬のすき間を捉えて打つ場面であり、左45度にシュートモーションで切り込みます。そこにディフェンスは集中しますから逆の45度に走り込み、先に入った選手はシュートモーションからパスに変え、そのパスをキャッチします。そこでもし「ため」ていたなら、ディフェンスは移動しますので移動しないうちに打ちます。これがクイックシュートです。またノーマークシュートでも、合わせようとしているキーパーに対して小さなモーションで早く打つことによってその効果は発揮されます

(3)空間でためるシュート

これは大きくジャンプをして十分待ち、おりながら打つ方法で、キーパーの身体に力を入れさせ、または一瞬、心理的な動揺を誘い、その後にシャープに打つ方法です。

いろいろな場面で使われますが、セットオフェンスで使うと守備側は特にポストパスの恐れもあるので守り方が難しくなります。

シュートあるいはパスと一動作から二つの攻撃ができるためにディフェンスやキーパーは、タイミングを合わせることが困難になる素晴しいシュート法です。このシュートは跳躍力が必要ですが、まず効力があるのを知る方法としては跳箱の踏み切り板を使ってシュート練習をしてみると理解できます。同時に空間での感覚を習得できますので大いに利用して下さい。それを右利きの場合は右サイドシュートとして使うと最も大きく角度が取れるので、合理的なシュートとなります。踏み切る要領は多少違いますが、基本的 には同じです。  

(4)バックシュート

ポストでパスを受けても相手ディフェンスのつめが早い場合はなかなか左右に回って打つことが不可能になります。そのような場合、唯相手の反則を待つのではあまりにも芸がないので、すかさずバックシュートを打ちます。臨機応変にシュートを使い分けられるようになると攻撃の幅は一段と大きくなります。  

シュート法としては横に大きく振り回す方法と手首だけで横を使わず、ボール一つ通る幅で体側から出す方法とがあります。前者は右側に余裕がなければ打てないし、またその余裕があるのなら右まわりポストシュートが打てるはずです。後者は絶対絶命に追いこまれてもなお、スナップを中心にしてわずかな空間を狙えるので有効です。練習は二人でパスから入って投げる感覚をつかみ、その後にシュートに入り小さなモーション、小さなすきを利用して打てるまで繰り返し練習することです。このような練習は合同練習外の個人練習の時間に習得するのがよいでしょう。  

(5)プロンジョンシュート

ためのシュートや変化シュートよりも先に必要な基本的なシュートに倒れ込みと飛び込みシュートがあります。これらは小さなすき間をつくポストプレーやサイドシュートに使われます。投法はオーバハンドかスリークォーターでの変形で、あくまで基本は身体を左右に倒しても、上体と腕の関係は変わらないことです。(写真Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)。 p1 2-2p2 p3 

練習はいきなり行うと危険であり、砂場や柔かい地面を利用して十分練習します。ある程度形を習得した後に、実際にポストから打ちますが、できるだけ衝撃を少なぐするために、低い姿勢から角度を少なくし腕や他の身体の前面を使って、やや滑り気味に身体防御をしなければなりません。 

横に変化する方法は、最初に腕を先に着いたままでシュートする練習をして下さい。これも同様に砂場やマット、柔らかいコートを使い、段々と高く跳びシャープなシュートが打てるようにしていきます。

危険性をはらんでいますのであせることは禁物です。しだいに手を先に着かないように高く跳び、強烈なシュートが打てるよう努力して下さい。

 (6)サイドシュート

サイドシュートは取り立てていうまでもなく、基本はすべてジャンプシュートであり、センターからの倒れ込みシュートが正確に打てる選手であれば、やはりサイドシュートも簡単にこなすことができるものです。 

狭いコーナーの感覚をつかむことにより、容易に狙うことができるようになるはずです。技術のポイントは角度を創ることで右利きの場合、左サイドからは二種類(ランニングジャンプシュートで引っ張ってバウンドで変化させる方法と、倒れ込んで角度を取り上、下に打ち分ける方法)です。右サイドからはジャンプシュートで、しかもキープと角度を十分にとって打つ方法が賢明です。飛び込みシュートも時には有効ですが、角度がないためにコンスタントに決めることは仲々困難です。

種々のシュート法がありますが、何といっても基本はジャンプとステップから始まることを忘れずに、それらを完全なものにしてから次のシュートにはいるようにします。変化のあるシュートができたからといって基本であるシュ ート練習をおろそかにしてはなりません。

(川上)

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